第1回R-18文学賞読者賞を受賞した、豊島ミホさんの小説。
画像は新潮文庫版ですが、新潮社の単行本版を図書館で借りてきて読みました。
文庫とは収録している作品が違うのだとか。
単行本は「青空チェリー」「なけないこころ」「ハニイ、空が灼けているよ。」
文庫版は「ハニィ、空が灼けているよ。」「青空チェリー」「誓いじゃないけど僕は思った」です。
青空チェリーは何年か前に読んだ気がするのですが、「こんな話だっけ?」と思うぐらいには忘れていました。
この受賞が2002年で、豊島ミホさんは6年後に休業することになり、「小説新潮」2008年12月で「休業の理由」を発表します。
わたしも読んだのですが、「一作目が一番好きだった」と書かれていたのがなんとも印象に残っていました。
そんなふうに悩みながらも6年間たくさんの作品を書かれて、今でも図書館に並んでいるのはすごいなぁと思っています。
【2022年】
単行本と文庫本を読み比べました。
「青空チェリー」はほぼ同じで、単行本「なけないこころ」と文庫本「近いじゃないけど僕は思った」は根底に流れるテーマが一緒だけど全然別の話、そして、「ハニィ、空が灼けているよ。」は、ブラッシュアップされています。
文庫の解説で藤田香織さんが
“わずか三年で、彼女の「小説を書く技術」は本当に上達しました”
と書かれているのですが、本当にすごいです。
文庫の「ハニィ~」を読んだ後で単行本の「ハニィ~」を読むと、あらすじに思えてくるほど。
最後の手紙も言っていることは同じだけど、少しずつ手が入っていて、読み比べる価値があります。
いずれも現在では入手困難なので、今から読むなら図書館で借りるのがいいと思います。
文庫版で「ハニィ、空が灼けているよ。」を冒頭に持ってきたのもかなりの決断だったんじゃないでしょうか。
「青空チェリー」も改めて読んで、ありそうでなさそうな非凡な話で、すごいなと唸ります。
藤田香織さんの解説は2005年7月に書かれたものです。
“「小説を書く技術」がどれだけ上達しても「上手いよね」ではなく、私は、私たちは、こう言ってしまう気がするのです。「豊島ミホっていいよね」と。”
それから17年が経ち、豊島ミホさんは小説家を休業していますが、いまでも「豊島ミホっていいよね」と言っている人がたくさんいるのは間違いありません。