東日本大震災で大きな被害を受けた石巻市。
その災害医療を担った石巻赤十字病院の苦闘を記した本です。
文章だけで現場の混乱や凄惨さが伝わってくるようでした。
この本の特徴は「人」にスポットライトを当てていることです。
病院というと医師や看護師をイメージしますが、
栄養士、薬剤師、事務職員などすべてが自らの仕事を遂行していました。
名前が出ていない人たちも、ひとりひとりが奮闘していたことが伝わってきます。
おそらく石巻赤十字病院以外でも、
あちこちの現場でこうしたドラマが繰り広げられていたのでしょう。
「津波の水は不衛生なので普段はなんともない傷でも化膿した」とか、
「避難してきた人の分の食事はないので、新聞紙で隠して運んだ」とか、
いままで考えたことがないような事実も多くてハッとさせられます。
ほかにも、テレビを見ていただけでは知り得なかったことがわかって、
ドキドキしながら読み進めました。
大変な状況下でもベストを尽くそうとする人々の力に胸を打たれる一冊です。