2009年7月16日にトムラウシ山で18人の登山ツアーのガイド1名、ツアー客7名が亡くなりました。
死因は低体温症です。
ニュースを見たときは「山を甘く見たのだろう」なんて思っていましたが、
そんなに単純な要因ではなかったということがわかります。
この事故の教訓を生かして、山で遭難する人や低体温症で亡くなる人がひとりでも減るといいと思いました。
本の内容
この本では事故の要因を気象遭難、低体温症、運動生理学、ツアー登山の観点から分析しています。
第1章ではツアー開始から遭難、救助までが生存者の証言を交えて詳しく書かれています。
淡々とした文章ながら、ひとりずつ亡くなっていく様子がとても怖いです。
登場人物が多く、名前を覚えるのが大変だったので、わかりやすい一覧表があるとよかったと思います。
2回目に読むと「この人があとで亡くなるのか…」とドキッとします。
死亡フラグがある人もいれば空振りだった人もいて、
「事実は小説より奇なり」という言葉を思い出しました。
同じ日はツアー関係者に加えて、もう1人の単独登山者が亡くなっていたそうです。
この人については目撃者もいないということでほとんど触れられていませんが、かなり怖いです。
登場人物の名前
当時のニュースを検索していたら、この本の登場人物が仮名ということに気付きました。
もくじの終わりに「氏名は仮名とした」と書かれています。
事故報告書では氏名がアルファベットになっていました。
仮名であっても名前があると、ひとりの人間としての重みを感じられます。
ニュースで「18人中8人が亡くなった」と言われてもピンときません。
この本を読んで、それぞれの人生があったのだなぁとしみじみ感じることができました。
映画「ショーシャンクの空に」で、主人公アンディが亡くなった囚人の名前を尋ねるシーンがあります。
あのときのアンディの気持ちがわかった気がしました。
伊豆ハイキングクラブとの対比
同じ日に一行と同じコースを歩き、無事に全員下山した伊豆ハイキングクラブとの対比も書かれています。
伊豆ハイキングクラブでも低体温症になった人がいたものの、仲間のサポートで下山できたそうです。
トムラウシ温泉に着いて、夕食を食べに行ったときのエピソードが紹介されています。
「自分たちの席の隣に、食べられることのない十八人分の食事がありました」
その光景を想像するだけで、胸が締め付けられました。
宮下奈都さんとの関連
作家の宮下奈都さんは『神さまたちの遊ぶ庭』で、トムラウシに山村留学していたことを書いています。
トムラウシ山遭難事故のことも過去の出来事として登場していました。
あの日は麓でも雪が降るような日だったのだとか。
この事故があったのは7月なので、いまの時期に読むといいかもしれません。